河合その子3作目のシングル「青いスタスィオン」。この曲をもっておニャン子を卒業するということで制作された卒業記念盤である。同じように、本体3作目のシングル「じゃあね」という曲を貰い、芸能界とは全く違う世界へ進んで行くなかじこと中島美春と共に、1986年3月31日の夕ニャン第一回卒業式、そして翌日の日本武道館公演をもって、2人はおニャン子から旅立った。そして、おニャン子の絶頂期は、2人の卒業をピークに終焉を迎えた。
結果的に2人の卒業は、以降のおニャン子人気に影を落とす大きな要因となる。おニャン子屈指の美少女であり、グループ最年長である河合その子は言わずもがな、やはり、なかじの卒業がおニャン子にとっては大きな痛手だった。誰からも好かれる性格の良さは、あの新田と国生、両者共に良好な関係を築くという、まさしく「おニャン子の緩衝材」だったなかじ。そのなかじという絶対的なパワーバランスを失ったおニャン子は、ゆっくりと、しかし確実にその関係性に歪みが生じはじめた。
自身のラジオでポロっと漏らした本音
ここで。記事冒頭のタイトルに話を進めると、当時「青いスタスィオン」がチャートの上位に駆け上る中、自身のラジオ番組で吐露したのが、冒頭のタイトル「良い曲と言われるよりも、良い歌と言ってほしい」である。本人の発言なので至極当たり前だが、当時の河合その子の心情を、これほどまでに的確に表した言葉は他に見当たらない。
楽曲において、詞、メロディー、アレンジ、全てにおいて、「青いスタスィオン」は、アイドル歌謡の良い所取りを重ねた見本のような楽曲である。それは、数多ある「作詞:秋元康-作曲:後藤次利」作品の中でもずば抜けた完成度を誇っている。しかし、あくまでも「楽曲は」というのがミソであり、そこには「歌唱」の部分は含まれない。河合その子に潜在的な歌唱力はあれど、当時のファンは別にそこを求めているわけではなかった。
それはやはり、大方のファンが河合その子を「圧倒的に優れた容姿、おニャン子のビジュアル要員」として捉えていたから他にないであろう。本人の意志に反して声を作った「涙の茉莉花LOVE」が、最終的には良い意味でも悪い意味でも、絶対的な河合その子のイメージとして決定づけられた。故に、本人の望む方向、具体的には歌唱という面から外れたビジュアル先行的な人気を獲得し、そのイメージを保たなければならない現実。それ故に思わずポロリと出したのが冒頭の一言だと思う。
最も、潜在的な歌唱力があると書いたが、基本的にはソロデビュー時から1987年までは、一定のレベルで保っており、抜きん出て歌唱力がアップした時期は見出せない。元々ある程度の歌唱力が備わっており、そこに「声色を上手く使い分ける」器用さを持っていだだけのこと。河合その子の歌唱が恐ろしいまでに向上したのは、紛れもなく1988年から。以降は全く別人のような歌声でシンガーとして歩んでいく。
O社年間売上10位に入る大ヒット曲。なのに、ザ・ベストテンでは不遇っぷりといったらそりゃ、もう …
シングル売上のアベレージが30万というおニャン子全盛期に発売されたこともあって、最終的な売上は約34.1万枚という大ヒットを記録した。これは、同年リリースされた明菜様の「ジプシー・クイーン」とほぼ同水準ということから、いかに売れたかということが分かる。もちろん指定席の「O社初登場首位」を獲得し、最終的には1986年度O社年間売上第10位という立派な記録をも獲得した。ちなみにこの「青いスタスィオン」は、同時期の「ダンシング・ヒーロー」や少し前の「なんてったってアイドル」よりも売れている。
一方でザ・ベストテンはというと、おニャン子に厳しかっただけあって、通算6週ランクイン、最高4位、最高獲得得点7,666点、1986年年間ベストテン第44位という、レコードセールスの良さに比べると凡庸な結果に終わる。そりゃ「毛が三本」も出演拒否したくなるよな。ちなみにトップテンでは最高2位まで到達している。
楽曲レビュー
1.青いスタスィオン
前述したように、楽曲に関してはアイドル歌謡の見本のような、すば抜けた完成度を誇っている。スタスィオンがフランス語で「駅」という意味から察するように、この曲以降「似非ヨーロピアン路線」がスタートすることになる。「タッタカタッタカ、ンドド」という繰り返し刻まれるリズムが、列車が快走していく音を彷彿させ、弦を主体にしたアコーディオンやバンジョーの音色で、上手くヨーロピアンな世界観を作り上げている。詞は、概ね「木綿のハンカチーフ」と同様なもの。
2.さよならは言わないで(with おニャン子クラブ名義)
あまりにも「青いスタスィオン」が素晴らしいので、数度聞いた後に封印。以降、敢えて解こうとも思わないのでレビューは割愛させてもらいたい。

楽曲基本データ
・タイトル:青いスタスィオン
・発売日:1986年3月21日
・作詞:秋元康
・作曲:後藤次利
・編曲:後藤次利
・O社最高位:1位 売上:340,780枚
・ベストテン最高位:4位 最高獲得点:7,666点