河合その子5作目のシングルである「悲しい夜を止めて」。この曲辺りから「アリン子のような衣装」と揶揄されたように、衣装や振付に独特のセンスが現れるようになる。そして何と言ってもこのシングル、ジャケットが史上最強に美しすぎる。憂いのある目で見つめる視線と、敢えて本人のアイディアとも言われている「濡れた髪」が妙に生々しい。
異彩を放つ楽曲は、前後のシングルの中でもこの作品だけ浮いている
牧歌的なアレンジに乗せて「地元から都会へ旅立つ彼の後ろ姿」をきゅんと切なく歌った「青いスタスィオン」、仰々しいピアノと弦の掛け合いが「ヨーロッパに住む彼に会いたいがために、遂に自ら飛行機に乗って向かう」というスリリングな心情を表すような「再会のラビリンス」、そして結局は、彼に会えなかった故に、破壊衝動を伴うかの如く「叶わぬ恋」へと猛進していった「悲しい夜を止めて」。一聴しただけでは繋がりの見えない曲達が、薄くもしっかり繋がっているというのは考えすぎというものだろうか。
この「悲しい夜を止めて」を一言で言い表すならば、「デカダンス」。「デカダンス」とは、特にフランスにおいて、伝統的な規範や道徳に反発して、病的な情調を重んじ、極端に洗練された技巧を尊び、異常、珍奇、退廃的な美を追求する耽美的な傾向を示す文学的な言葉であり、伝統的な規範とは「今までのアイドル史」、道徳とは歌詞の内容から推測するに「叶わぬ恋」、病的な情調とは「やたらと重い曲調」、極端に洗練された技巧とは「転調に次ぐ転調」、異常、珍奇、退廃的な美とは「蟻ンコとも揶揄された独特な衣装」。強引だがこの曲と無理やり結び付けると、意外としっくりくるが、これも考えすぎというものだろうか。そして、持っている曲調や雰囲気から、前後のシングルディスコグラフィーからは少々浮いた存在になっている。
ザ・ベストテン出演拒否
3作連続、通算4作目のO社最高位首位を獲得するが、売上は12万強という、全盛期「青いスタスィオン」の半分どころか1/3を少し超えた売上枚数に終わる。トップテンでは最高2位まで上昇するが、ベストテンにおいてはチャート集計方法による食い違いで「毛が3本」と対立していた時期にあたるので、2週ランクイン、最高獲得得点6,300点代といった、一定あるセールスからは考えられないほど低いランクインに甘んじた。
楽曲レビュー
1.悲しい夜を止めて
これから訪れる冬を彷彿させる硬質なサウンドに仕上がっている。あからさまなヨーロッパ要素は影を潜めている。イントロやアウトロで使用されているフロアタムや、インドの民族楽器シタールのような音色が入っていたりといった。どちらかといえば無国籍な雰囲気の楽曲になっている。サウンドは完全にアーティステックだが、歌っている時の河合その子は、まだまだおニャン子のオーラが全開なので、一応はアイドル歌謡の範疇に収まっている。
2.やさしさなんていらない
未聴。

楽曲基本データ
・タイトル:悲しい夜を止めて
・発売日:1986年10月22日
・作詞:秋元康
・作曲:後藤次利
・編曲:後藤次利
・O社最高位:1位 売上:127,860枚
・ベストテン最高位:7位 最高獲得点:6,397点